The法円坂vol.70 メディアのあり方

メディアのあり方

弁護士 山本美愛

 昨年は暗いニュースが多かったですね。報道に関して興味深かった事件を2つ。

 1つは、ロシアによるウクライナ侵攻です。日本では具体的な報道がされていませんが、欧米メディアは全く違いました。被害者がどうやって殺されるか、レイプされるか、虐待されるか、犯罪行為を行っている最中に兵士が何を被害者に言ったか、どんな物品を奪い、犯罪現場に何を遺留したか等、被害者や目撃者等の証言からリアルに様子を伝えています。

 戦争が起こったら、女性なら、配偶者やパートナーを目の前で殺され、自身と子供をレイプされ、財産を奪われ、思い出の全てを焼かれ、挙句殺されるか死んだ方がマシという烙印を押される。ロシアウクライナ戦争は、白黒でしか戦争を知らない私たち世代にカラーの世界の出来事として戦争を見せたのでした。

 もう1つは、安倍晋三元首相の殺害です。お亡くなりになった途端に各所で色々な問題が噴出しましたが、それは措いて、メディアに出てきた報道局長等方々の発言が興味深かったです。それは、安倍元首相がどういった食事を好まれるか、お酒は何が好きか、食事の際にご本人から取り分けていただいたことがあって等々の発言ですが、確かに、故人を偲ぶ気持ちからついというのは分かります。ただ、全国放送で、何の躊躇もなく語られる姿を見ると、職業倫理は?と複雑な気持ちになったものです。

 米国では記者が政治家と面会する際には、コーヒー1杯以上は癒着と見なされると聞いたことがあります。

 本年は明るいニュースで国内報道と各国の報道を比較したいと思います。