The法円坂vol.69 書評「2030年の世界地図帳」(落合陽一著)
書評「2030年の世界地図帳」(落合陽一著)
弁護士 中島宏治
2015年9月、国連にて、「我々の世界を変革する:持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」(SDGs)が採択されました。SDGsの17の目標は、デザインがシンプルかつカラフルで、大企業を中心に浸透してきました。2030年への社会的課題への全世界の取り組みの目標ですので、中小企業における取り組みがこれから重要になると思います。
そんな中、落合陽一さんの「2030年の世界地図帳」を読みました。SDGsを意識した非常に面白い書籍でしたので、ご紹介します。
SDGsのゴールとされる2030年はどのような世界となっているのか。どなたも興味あると思います。
落合氏は、テクノロジーと人口により未来を俯瞰しています。
<テクノロジー>
5つの破壊的テクノロジー(①AI、②5G、③自動運転、④量子コンピューティング、⑤ブロックチェーン)により、生活が大きく変化するだろうという予測です。例えば、AIによって労働業界に変化があるということは既に議論されていますが、食品ロスの問題もブロックチェーンやAIによる管理により解決が可能だと指摘されています。
<人口>
人口は、2030年は中国・アメリカ・インドの時代になると予測されています。2030年にインドが世界第1位になることは確実で、GDPも世界第3位になると予測されています。インド以外にも、アフリカの人口増加は確実です。
<4つのデジタル・イデオロギー>
そのうえで、落合氏は、2020年代を牽引する4つのデジタル・イデオロギー(①アメリカン・デジタル、②チャイニーズ・デジタル、③ヨーロピアン・デジタル、④サードウェーブ・デジタル)の説明をされています。
①アメリカン・デジタルがGAFA+M、②チャイニーズ・デジタルがBATHであることは有名ですが、④サードウェーブ・デジタルは、インドのタタという自動車メーカーに代表されるような、貧困国の市場に適合するように開発された商品の製造をする流れ、③ヨーロピアン・デジタルは、ヨーロッパの伝統と文化を背景としたブランド力によるエンパワーメントの流れです。職人技のものづくりやブランド価値のような付加価値を高める方法論は、SDGsの目指す働きがいや経済成長と労働負荷や環境負荷の低減を同時に行っていくという考え方と親和性が高いと説明しています。
そして、日本は、米、中、欧の中間地点に活路があると紹介されています。2030年の世界地図を見ながら、日本の目指すべき道を考えるヒントになると思います。