The法円坂vol.67 安倍長期政権の綻び
安倍長期政権の綻び
弁護士 稲田堅太郎
安倍総理の在職日数が昨年の11月20日で桂太郞総理を抜いて憲政史上最長の長期政権となった。
この間、安倍総理は法や民主主義の原則を踏みにじり、日本の国の国際的評価を著しく低下させてしまったという他ない。
華々しく打ち出したアベノミクスでは円安を進行させて大手企業の海外輸出を容易にし、株価の上昇には日銀の曝買いと年金基金の導入によって海外をふくむ一部投資家を喜ばせただけであった。
官僚人事を壟断して「官邸官僚」と呼ばれる自分に近い官僚を主要ポストに据え、自分の親しい人たちに利権を分け与えてきた。森友学園問題や加計学園問題をみるだけで明らかである。
御自分に責任がまわってきそうになると官邸官僚を活用して公文書の破棄をさせるなど目に余るところがあった。
外交政策では対米従属以外に戦略がなく、対北朝鮮の拉致問題解決について政権の最重要課題と位置づけていたにもかかわらず、強硬姿勢を示すばかりで、ただ一人の拉致者も奪還することができなかった。北方領土に関しても全く成果なし。
安倍政権では規制改革推進会議や国家戦略特区諮問会議が主導する形で規制改革と民営化を推進させたが、その最たるものが主要農作物種子法の廃止や「既得権益の農協を潰せ」であって、営利を追及する企業が日本の農業や漁業を支配させるような政策を打ち出したり、既にヨーロッパでは失敗に終わっている水道事業の民営化を推進させるための「水道法」の改正に着手したりした。
内閣改造によって新たに出発した途端に経済産業大臣と法務大臣が公職選挙法違反のからみで相次いで辞任し、その挙げ句が「桜を見る会」をめぐる私物化問題の炎上である。「桜を見る会」は1952年に吉田茂首相が開催したのがはじまりで公費で催す公的行事であるにもかかわらず、安倍総理の後援者らが大勢参加し、タダ酒、タダ飯にありついていたのだから、自身の支持者や「腹心の友」に利益誘導した森友、加計問題と同様のものであり、ここでも公文書の廃棄を実行するとともにご自身に類がおよぶとみると来年度からの会を中止すると発表するなどおそまつな対処ばかりであった。
神戸女学院名誉教授の内田樹氏の言によれば、第二次安倍政権になってから「国益を代償にして自己利益を確保しようとする人たちが日本の支配層を占めるようになった。恐ろしいほどの勢いでの国力の衰微と国際社会における地位低下をもたらしている」「対米従属テクノクラート」と呼ぶべき一団の人たちが日本の方向を決めていますが国家戦略がない。内政では権力の独占と自己利益の増大以外に関心がない。経済力もない、政治的指南力もない、オリジナルな安全保障構想もない、何もない。だから五輪だ、万博だ、カジノだ、リニアだ、というような時代遅れの打ち上げ花火的な公共事業と「「日本スゴイ」「クール・ジャパン」とかいう貧乏くさい幻想を振りまくくらいしか思いつかない と断言されている。
(「株式会社化する日本」(詩想社新書19~20P)全く同感である。