The法円坂Vol.65 公益通報者保護法の実践
公益通報者保護法の実践
データ改ざん、法令違反の発覚、巨額の不正会計、個人情報の流出など、日本を代表する大企業の危機的な不祥事が頻発しています。これら不祥事で失うものは、信頼失墜による企業価値の毀損であり、単なる株価の低下にとどまりません。
不祥事を起きにくくする、また起きたとしても傷口を最小限に抑えるために、企業は何をすべきか。それは事実関係を明らかにし、原因を分析し、再発防止策を採ることに尽きますが、最も大事なことは公明正大であることです。問題が大きくなる時は大抵、誰かが嘘をつく、情報を隠すなどして、責任逃れをしています。実際に、私も、相手方の初動対応さえ誠実であれば沙汰なしで済んだのではないかと日々の業務で思うことは多いです。
みなさんは、公益通報者保護法(以下、「同法」)をご存知でしょうか?
同法は、公益のために通報を行った労働者に対する解雇等の不利益な取扱いを禁止する法律です。「通報」というと、会社にとってみれば身内からのチクリと評価も出来るので良い印象はないかもしれません。しかし、内部通報が機能していれば、問題がまだ小さいうちに対応できる可能性があり、長期的にみて危機的な不祥事が起きにくくなるというメリットがあります。
私は、大阪弁護士会の公益通報者保護委員会に所属しており、電話窓口で労働者等からの相談を聞くことがあります。そこで多くの方が、報復はないのか、また、どうしたら身元を隠したまま通報できるかと仰います。通報制度の機能不全を強く感じます。
本年9月、中国の通信会社Huawei(ファーウェイ)が内部通報をした社員を昇進させました。同社創始者が、「真実を貫いてこそHuaweiは充実する」とのタイトルで全職員に宛ててメールを出し発表しています。メールには「我々は職員および幹部が真実を語ることを奨励すべきだ。」「真実は組織の管理を改善するのに役立つが、嘘は管理を複雑化し、コストを高める要因となる。」とあります。通報者保護が長期的にみてコストを抑えることに繋がると理解されていること、日本企業も大いに見習うべきと思います。
弁護士 山本 美愛