The法円坂Vol.65 横田空域

「横田空域」

 東京へ出向く際に、時々飛行機を利用して伊丹から羽田にいくことがあります。羽田に着陸する際にどの飛行機も東京都心を南廻りして房総半島上空から羽田空港に進入しています。何故だか判りますか?「横田空域」といって日本の首都圏の上空は全て米軍に支配されていて、日本の航空機は米軍の許可がないと「横田空域」の上を飛ぶことが出来ないため、いちいち許可をとる訳にはいかないので、JALやANAの定期便はこの巨大な山脈のような空域を避けて非常に不自然なルートを飛ぶことを強いられています。
 「横田空域」は東京都の西部(福生市ほか)にある米軍の横田基地が管理する空域であって東京都の高級住宅地である世田谷区、杉並区、練馬区、武蔵野市などはほぼ全域がこの区内に入っています。
 米軍はこの空域内ではどのような軍事演習をすることも可能であって日本政府の許可を得る必要もありません。
 万一、この空域でオスプレイなどが墜落して死者が出たとしても事故の原因が日本側に公表されることもなく、正当な補償がなされる可能性もありません。
 航空法特例法第3条には「前項の航空機(米軍機と国連軍機など)については航空法第6章の規定(航空機の安全な運行について定めたもので、「離着陸する場所」「飛行禁止区域」「最低高度」「制限速度」「飛行計画の通報と承認」など43ヶ条の条文)は適用しない」ことになっており、要するに米軍機は日本の上空において、どれだけ危険な飛行をしていても合法だということです。
 外務省がつくった高級官僚向けの極秘マニュアル(日米地位協定の考え方増補版1983年12月)のなかに「アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる」「日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定されていない」の見解が示されており、要するに日米安全保障条約を結んでいる以上、日本政府の独自の政策判断でアメリカ側の基地提供要求にNOということができないということを外務省が認めているということです。基地の問題は単に沖縄だけのことではありません。
 以上の如き見解およびその他米軍の治外法権など9項目にわたる指摘を矢部宏治さんが昨年8月に出版された「知ってはいけない隠された日本支配の構造」(講談社現代新書)には記載されています。矢部宏治さんには「本土の人間は知らないが沖縄の人はみんな知っていること」(書籍情報社)「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」(集英社インターナショナル)「戦争をしない国 明仁天皇のメッセージ」(小学館)「日本はなぜ戦争ができる国になったのか」(集英社インターナショナル)等々、中・高校生にもわかりやすい出版物がありますのでご一読の程。

弁護士 稲田 堅太郎