3だけ主義の暴挙

3だけ主義の暴挙

 自らが野党であった時には「TPP断固反対、ブレない、ウソつかない」を公約として選挙戦を戦い、全国各地域の声を集めて多数派を形成して登場した自民党の安倍政権は、あっという間に公約を反故にして「TPP礼賛」に変化し、アベノミクス政策の一環として2013年7月より正式に交渉に参加、2年以上の交渉経緯については私達国民にTPP(環太平洋連携協定)の本質を充分に説明しないままにアトランタにおいて2015年10月5日に大筋合意となり、自由貿易の推進と五年程度をメドに段階的に関税が撤廃されることとなりました。
 さらに、大統領候補のいずれもが反対しているアメリカをはじめ参加一二カ国の全てが未だTPP協定の承認を受けていないにもかかわらず2016年11月4日に衆議院特別委員会で野党抗議の中で強行採決されました。
 TPP協定には(1)関税撤廃によって米国から廉い農作物が流入し、日本農業に大打撃を与える(2)規制緩和によって食品添加物・遺伝子組み換え食品・残留農薬など食の安全が脅かされる(3)医療保険の自由化、混合医療の解禁により国保制度への圧迫や医療格差の拡大等々のデメリットの他、問題点としてISDS条項(投資家や企業が投資先国の規制について提訴しうる紛争解決条項)やラチェット規定(一度自由化、規制緩和された条件は取り消すことができない)の存在があります。
 食は命の要、安全保障の要であり、安全な食料を必要な量だけ国民に確保するのが国家の責務であろうかと思います。
 しかしながら「米国に追従することで自らの地位を守る」ことを至上命題とする安倍政権にとってアベノミクスの一環としてのTPP協定の推進は絶対のものであり、人々の命、健康、暮らしを犠牲にしてでも短期的な儲けを優先する一部の経営者と結びついた政治家、天下りで結びついた官僚、スポンサー料で結びついたマスコミ、研究資金で結びついた研究者らが総動員で国民の大多数を欺いて「今だけ、金だけ、自分だけ」の3だけ主義に基づく行為としてTPPやそれと表裏一体の規制「改悪」農業・農協「改悪」を推進してアメリカを喜ばそうとしているとしか考えられません。
 日本のTPP参加をアメリカが承認する条件として、かんぽ生命が「ガン保険に参入しない」ことを自主的に約束させられた上に、全国2万局の郵便局窓口でアフラックの保険を販売させられている事実はTPPの正体を露骨に象徴するものという他ありません。
 私達はTPPの危険性に巻き込まれることなく、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」で人の健康、雇用者の生活、環境にも配慮して、遍く行き渡る均衡ある発展を目指すことが日本社会の持続の道であることを確信をもって進んでいかなければならないと思います。(鈴木宣弘「悪夢の食卓」参照。)

弁護士 稲田 堅太郎