カジノ考-ばくちは人を幸せにしない-
カジノ考 - ばくちは人を幸せにしない
安倍内閣は、「IR統合型リゾートの推進」を成長戦略の一つとして、カジノや会議場、レクレーション施設、ホテルなどのリゾート地をつくり、カジノに外国人観光客を呼び込み、さらに雇用や建築をはじめ様々な需要をおこし、経済を活性化するという。
カジノは賭博である。日本には競馬、競輪、宝くじなど六つの公営ギャンブルと、パチンコ、スロットがある。厚生労働省の調査(2013年)では、日本のギャンブル依存症は成人男性の8.8%、女性の1.8%、全体で4.8%で、推定患者数は男性438万人、女性98万人計536万人という。アメリカは1.58%で、日本はギャンブル依存症大国である。
ギャンブル依存は人間を変えてしまう。遊ぶ資金を得るために嘘をつくし、家族の金も盗む。大王製紙の会長は子会社の金を何十億円もカジノに使い特別背任で訴追された。2006年には、阪大生がパチスロにはまり込み母親を撲殺した事件がおきた。ギャンブルが原因の借金や家庭崩壊は多い。
このマイナスを超える経済効果はあるのか。カジノに外国資本が入ってくるが、そのもうけは日本に落ちない。カジノにつぎ込む金は何も生み出さない。そして、韓国では「カジノホームレス」が問題になっているように、依存症になって身を滅ぼす。カジノの経済効果は、国民の生活を豊かにするものではない。
賭け事は古くからある。内田樹氏は賭博をやめろと青臭いことは言わないが、「陽のあたる場所でやるべきことではない」「何となくはばかられるという常識が蔓延を抑制する」という。後ろめたさをもって表に出てはならないものが世の中にはある。それをビジネスにしてはいけない。考えさせられる言葉である。
弁護士 乕田 喜代隆